目的に立ち帰り、チームの儀礼的ふりかえりを改善した話

この記事は「ふりかえりアドベントカレンダー2025(裏)」の15日目の記事です!!!

adventar.org

はじめに

私は、一つのプロダクトを開発しているPMを含めた6名のチームに所属しており、ふりかえりのファシリテーションを行っています。

そして現在、もともと行っていたKPT的なふりかえりを変更し、以下のような独自のフォーマットを用いたふりかえりを行い半年以上継続しています。

今回は、なぜこのような形にふりかえりの形を変更したのかなどのお話を通して、この形にする上で大切にしていたマインドなどについてお話しようと思います。

チームで行なっていたふりかえりについて

我々のチームでは、二週間を1スプリントとし、スプリントの終わりにそのスプリントについてチーム全体でふりかえる時間が設けられています

これまでは、以下のような流れでふりかえりを行なっていました

  • メンバーそれぞれが、Keep、Problem、Tryについての話題を記入する
  • 時間になったら、メンバーが一人ずつ、それぞれの話題を紹介する
  • メンバー全員分行う

このような形式を取ることで、スプリント内の自分の行動を振り返ることができていました。また、チームメンバーのプライベートの話題も満遍なくお話しすることもでき、リモートワークがメインの我々のチームの近況を知るいい機会にもなっていました。

この形式の課題感

しかし、この形式でふりかえりを行なっている中で、私は以下のような課題感を感じていました。

  • チームで顔を合わせているのに、チームを主語としたお話が出にくい
  • それゆえに、ふりかえりを行なった前後で、チームに変化はあまり起きない
  • そのため、チームに問題があったとしても、気づいた人が率先して行う形に依存してしまっている

「スプリント最終日にみんなで集まって起きたことについて話す会」となっていたふりかえりは、スプリント最終日になんとなるやる儀礼的なイベントのようになってしまっていたのです。

チームで開発を行なっている以上、意図しない手戻りや認識の齟齬など、人と人とのコラボレーションの界面で発生する摩擦は必ず発生します。その摩擦がチームの話題に上がらなかったり、一部の人間が問題カバーし続ける状態は健全な状況ではなく、改善していきたいと私は思いました。

そこで、このチームの摩擦を低減するような役割をふりかえりの時間に持たせることを目的とし、改善を行いました。

課題が発生してる原因についての仮説

ふりかえりでチームの話題が出ないことの原因としては以下のことが考えられました。

  • 進め方が個人の話題を前提としてしまっている
  • Keep=ポジティブニュース, Problem=ネガティブニュース というイメージが過度に浸透しており、メンバーがそれに囚われてしまっている

この原因に対処するために、ファシリテーターの声かけ方法の変更と、ふりかえりの進め方の変更を行いました。

実際に行ったこと

実際に行ったことについてお話します。

ふりかえりボードの変更+進め方の変更

言語化できていないようなモヤモヤした感情や、課題感でも話題に出していいことを強調することを目的とし、チームに取り組む以下のようなボードを作成しました。

  • 感謝・見習いたい → チームメンバーに対しての感謝や、見習うべき行動を書く欄です。日々の感謝を伝えることや、個人の良い取り組みを、チームの学びとして引き上げることを目的として設置しました。
  • これやってみて良かった!・続けていきたい → 自分が取り組んでみたことについて、他のメンバーにも共有したいことを書く欄です。個人の取り組みが共有されることにより、チームへの良い効果が波及することを目的として設置しました。
  • 言葉にならないモヤモヤ → チームでお仕事をする上で、「なんでこうなってるの?」「これやりにくいとみんな思ってないの?」など、解決策を思いついているわけではないけど、課題感を感じているものについて書く欄です。みんなが疑問に思っているけど、誰も話題にしていないような"elephant in the room"的な問題を掬い上げることを目的として設置しています。
  • ヒヤリハット・スプリント中の課題感 → スプリント内で発生した具体的な問題を書いておく場所です。客観的な事実をベースとして、改善できることはないかを議論することを目的として設置しました。

項目をKeepやProblemなどのシンボル名にするのではなく日本語にしているのは、メンバーが何を書けばいいかをわかりやすくする狙いがあります。「チームに関するproblemを挙げろ」と言われると尻込みしてしまいますが、「言葉にならないもやもやしていること・疑問」という項目であれば書きやすくなるかもしれません。

このようなボードにメンバーそれぞれに話題を記入していただいたのち、特に「話したい!」「聞きたい!」と思うものについてみんなで目印をつけます。ふりかえりの時間ではその話題を重点的に扱うようにしています。

ファシリテーターの声の掛け方の変更

メンバーの書いてくれた話を、チームの話題として扱うための声かけをファシリテーターとして意識して行なっています。例えば、「〇〇をやるのを忘れてしまった」のような個人の話題に近いものでも、起きた事象をチームに還元できないかの観点で問いかけを行っております。

具体的には、責任の追求にならないようには細心の注意を払いながら、「2週間前に戻ったとして、防ぐことはできたか?」「仕組みかできることはないか?」などの質問を通してチーム全体で議論をし、チームの知見にすることはできないかを模索していきます。

そのほかにやったこと

ただ「やり方を変えます!」というような提案は、あまり上手くいきません。そのため、これらのことを進める上で、チームメンバーにはふりかえりの方法を変更する目的と、ふりかえりの目的をあらためて考えたものを丁寧に共有しました。

また、方法を変更してどうだったかをふりかえりの最後の5分ほどでチームメンバーと共に振り返り、ふりかえりをさらに改善するアイデアや、変更したことによるモヤモヤなどを掬い上げることも意識的に行いました。

変更してみて

以上の施策を通して、当初の課題だった「チームの摩擦を低減するような役割をふりかえりの時間にできていない」という問題は改善しつつあります。実際に、それまでの方法では、チームからTryやActionが出ることはありませんでしたが、今では毎回のふりかえりで、チームで試してみたいことなどを出し、それをスプリントを通して定着させていこうという文化ができつつあります。(Try, Actionがたくさん出ることがいいふりかえりの条件であるとは思いませんが、チームがチームの問題に向き合うことができるようになったことの現れではないかとは思っています。)

おわりに

ふりかえりの改善を通して、今まではスプリントの最後にある儀礼的イベントのようになってしまっていたふりかえりの時間を、よりチームの改善に目を向けるための時間にしたお話をしました。

進め方や、採用しているふりかえりボードの形はメンバーの思考を制限します。その制限が目的の方向に進むために集中を促すためのガイドラインとなっている場合はとてもよい仕組みとして作用しますが、そうでない場合はチームの足枷になってしまうと私は思います。

常にチームの状態を観察し、チームにとって良い形式でふりかえりを行うために、これからも課題に向き合いながら改善をしていきたいです!